社章や襟章などのピンバッジを小ロット生産する新しい方法

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プレス機で生産されるピンバッジは小ロット生産には工程が多すぎて不向き

使用する素材に関しては社章や襟章などはほとんどが真鍮製です。たまに純銀や925シルバー製、プラチナ、18金製も作りますが、高額になるためほとんど見かけません。

ピンバッジはプレス方式で製造するため、まず金型が必要になります。金型の製造は、SK材などの高硬度鋼を用いて精密な彫刻機で時間をかけて彫り込み、電気炉で焼き入れして最後に常温の油に浸けて冷却し雌型を製作します。

ここまでの納期が早くても一週間、海外に発注すると安くできますが納期に三週間はかかるのが現状です。金型の製作費も2万~3万円は当たり前ですから、これがネックで少量の受注は困難なものになります。

金型を製造した後の工程は、フリクションと呼ばれる高圧のプレス機で真鍮材料などを雌型に打ち込んで、それをさらに別途用意した抜型を使って外形を落とします。

それをバレル機にかけてコバを落とし、板バフで一つ一つ上端面を磨き、ここまでやってようやく金属加工が終了します。

その後にメッキをかけたり色入れをしたり、裏ねじやピンタックをロウ付する工程がユーザーの用途により必要になりますが、メッキやろう付などの難しい工程をスキップする新しい素材や作り方もあります。しかしそれはここでは本題から逸れるので別の機会にまたご紹介したいと思います。

ピンバッジを小ロット生産するのに適した製造方法

プレス機でピンバッジを製造する方法は、大量生産に向いていますが、金型を製造するために長い時間やコストがかかります。そのため、小ロット生産には不向きといえます。

そこで、当社からご提案したい最新加工技術として、ピンバッジを金属用彫刻機で素材から直接削り出すダイレクト3D彫刻があります。

プレス機で生産されるピンバッジは小ロット生産には工程が多すぎて不向き

この画像は、厚さ2mm、横幅50mmの快削真鍮板に二本のツールで3D彫刻と切り抜き加工を行ったもので、加工時間はトータルで40分弱です。

使用機は、当社が製造・販売する超高速スピンドル搭載の卓上型NC金属彫刻機ME330 50kで、ツールパス作成のCAD/CAMには極楽彫Premium10を使いました。

ツールパス作成のCAD/CAMには極楽彫Premium10を使用

ツールパス作成の工程はいたって簡単です。シンプルでわかりやすい手順は一~二度実習するだけで誰にでも操作できます。

ツールパス作成の工程はいたって簡単

①イラストレータ等のベクトルデザイン支給データをCAD/CAM極楽彫Premium10でダイレクトに読み込みます。ベクトルのないビットマップ等の画像データからは自動輪郭抽出機能で原図に忠実で滑らかなベクトルを同一画面上に得られます。

②ピンバッジのサイズや加工位置、製作個数を決めて素材の中にレイアウトします。隙間の幅指定でも中心送りピッチでも自動複写することができます。

③加工テンプレートを呼び出して彫刻と切り抜きのツールパスを生成します。加工条件は経験と実績がモノを言う一番重要な設定になりますが、極楽彫Premium10には刃物と材料ごとに最適条件をプリセットすることができます。

④生成されたツールパスで彫刻結果を3D描画でシミュレーションできます。シミュレーションでは各種のバーチャル素材を質感とともに選択することができます。

⑤ ツールパスに使用する工具ごとにスプーラで送信するために保存します。ポストプロセッサ作成済みのマシニングセンタなどには一つのファイルに一括保存して自動工具交換させられます。

⑥彫刻、切り抜きの順に加工するためパソコンからME330 50kには工具ごとに一つずつツールパスを送信します。

⑦CAD/CAMの操作と前後して、彫刻機側では彫刻材料をバイスにセットして彫刻ツールから先にスピンドルに取り付けてZ原点を合わせておきます。

⑧彫刻が完了すると今度は切り抜き用ツールを取り付けて、切り抜きパスを送れば切り抜きも完了。

以上が彫刻と切り抜きの全工程です。

誰がどんなにゆっくりやっても全部で1時間もかかりません。

極楽彫Premium10を使用するのは当社の推奨する加工手順にすぎませんが、水平に材料をセットすることは彫刻加工の基本として、加工途中で材料がビビらないようにするパスの順序や構成、切り抜いた後もバッジがはじけ飛ばない固定方法、さらに刃物の摩耗が少ないようにするノウハウを盛り込んだ実践方式で生産性を高めてあるため、ここでは自信をもって革新的な技術としてご紹介できるものです。

もちろん、当社にて彫刻機とCAD/CAMを導入いただいた方には、このような実践的な技術のご指導も併せてご提供しています。

真鍮や銀を3D彫刻してその後で切り抜きするツールは、いずれも特殊な素材と形状であるため工具メーカーの総合カタログにも載っていませんが、いつでも安定的に供給して再研磨も短期間で受けられる恒久的な体制があります。

小ロットの生産が可能となれば、純銀や925シルバー製、プラチナ、18金製などの高級なピンバッジの製造も依頼される可能性も出てきます。

事業再構築補助金の業態転換のご提案

このような新しい加工方法の導入は、今現在、事業再構築補助金の業態転換の支援を受けられます。

当社が30数年前にCADベースのソフトウェアを持って彫刻業界に参入した時、工具の素材や形状、加工スピードなどのセオリー、そして一番大切な刃物の研磨技術は、彫刻業界の先人たちから多くを学ばせていただきました。

パソコンやインターネットの普及や生産技術の海外移転などで、残念ながら今のところ国内の彫刻業界は長い停滞から脱却するチャンスが見いだせていません。

だからこそ、この3D彫刻社章の製造メソッドは彫刻刃による少量多品種生産の好適な事例として、まずは刃物を研げる彫刻屋さんにご活用していただければ幸いです。

システムの導入だけでなく、事業再構築補助金の業態転換による新しい技術や商材の導入などもお気軽にご相談ください。

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