正しい業務用レーザー彫刻機の選び方

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レーザー彫刻機の歴史

業務用レーザー彫刻機は、アメリカで汎用品が開発されました。その歴史を知ることで、どのような製品が業務用として適しているのかが、見えてきます。

最初のレーザー彫刻機

PILOG社

今から30年以上前になりますが、アメリカでCO2レーザービームをプロッタ方式で導光する汎用型彫刻機がEPILOG社から最初に発売されました。

レーザー彫刻機が初めて市販機とて登場する歴史的な出来事でしたが、EPILOG社がレーザー彫刻機のパイオニアといわれる所以がここにあります。


レーザービームを照射する方式

レーザービームを照射する方式には、XYプロッタにミラーとレンズを仕込んで導くものと、ガルバノミラーと呼ばれる精密駆動レンズで位置決め照射する方式の二種類があります。前者をフラットベッドレーザー、後者をガルバノレーザーと呼びます。

フラットベッドレーザー

フラットベッドレーザーは、固定されたレーザー発振器から出たレーザー光を、XY軸で移動するミラーとレンズで照射位置のコントロールし、彫刻していきます。この手法は、初期から用いられてきた方式です。XY軸に移動するヘッドのスピードや移動可能距離によって、彫刻のスピードや加工面積が決まります。EPILOG社製のレーザー彫刻機は、この方式を用いています。


ガルバノレーザー

ガルバノレーザーでは、ミラーの角度を変えてレーザー光の照射位置を変えて彫刻します。ミラーの角度を変えるだけなので、彫刻スピードは速いですが、広い面への彫刻には適していません。

ガルバノミラーには、ミサイルの先頭に仕込んで標的を連続追尾する目玉のような役割を持たせたものが、アメリカ空軍から莫大な予算で開発されてきた経緯もあり、小型で精密なとても良い製品が実用化されました。ガルバノミラーの民生品への転用は、その開発がひと段落してから行われました。

EPILOG社の競合が出現

プロッタタイプで先行したEPILOG社は独走状態を続けますが、競合他社が現れます。

アメリカで後発のUNIVARSALという会社は発売当初、日本のローランドDG製の小型ペンプロッタを利用して、アームやヘッドにミラーやレンズを取り付けて板金ボックスに入れただけの、改変型レーザー彫刻機を作っていました。ローランドDGのペンプロッタには、他社にはない外部入出力の端子が装備されていたから出来たわけです。

これではまるでトラクターを改造して軽トラックを作ってしまう様な、少し乱暴な機械設計の思想がベースにありました。

余談ですが、ローランドDGもレーザー彫刻機の可能性を感じたのか、自社のペンプロッタをベースにしてUNIVERSALが搭載したレーザー発振器と同じものを使って板金ボックスに閉じ込めて、CAMM4という名前を付けたレーザー彫刻機を発売しています。しかし、この機械は、ゴム印のショルダー加工に必要な、レーザー発振器のなめらかなパワー制御が出来なくて、残念ながら早々と撤退してしまいます。

老舗のグラフテック社も、それを研究して同じような製品を開発ましたが、ローランドDGと同じ理由で製造を続けることが長くはできませんでした。

他社を真似て安直な機械を作ってしまった失敗例と言えば酷かもしれませんが、バブル時代には、とりあえず作れるものはまず作って発売してみるという風潮が、日本のメーカーには有ったような気がします。

なお、UNIVERSAL社が独自のXY制御技術を獲得するには、そのあと何年もかかっていますが、それまでに相当数の安価なペンプロッタ改変型レーザー彫刻機が製造販売されて、低価格機のシェアは獲得し、レーザー普及の手助けは実現しています。

また余談ですが、現在は自社製の機械でシェアを獲得しているオーストリアのTROTEC社も、最初はこのUNIVERSAL社からOEMで機械の供給を受けていました。TROTEC社は、回転式ゴム印メーカーTRODAT社の子会社で、ゴム印製造の販売ルートから販路を拡げてきたものと思われます。

しかし、レーザー彫刻機のニーズが高まり、時々このOEMのロゴがフロントパネルに入った機械が、UNIVERSAL社の機械に紛れ込んで日本で売られることもあるくらい、販売する側の考えがおおらかな時代もあったというわけです。

ここまで読まれたところでお気づきの方もいると思いますが、レーザー彫刻機の制御には、レンズヘッドを動かす位置決め制御と、レーザー発振器のパワーを連動して制御させる高度な技術が重要な要素になっています。

どのようなレーザー出力の製品を選ぶべきか

レーザー出力

レーザー彫刻機には、レーザー出力によって、さまざまな種類があります。EPILOG社製品であれば、30Wから120Wの出力まで、さまざまな種類があります。

安易な発想であれば、「大は小を兼ねる」ということで、高出力なものを選びがちですが、レーザー彫刻機を選ぶ場合にはそのようにはいきません。

レーザー彫刻機で木の板に彫刻をすることを考えてみましょう。木の板の表面に文字を焼き付ける程度でしたら、小出力のもので対応可能です。ところが、木の板に凹凸を付けるようなぐらいに焼いてしまう場合には、高出力のレーザーでないと、彫刻に要する時間が大幅にかかってしまいます。

かといって、繊細な彫刻をする場合には、レーザー出力を絞って彫刻をする必要があります。このときに、大出力レーザーの出力を絞った場合に、出力が10%以下になってくると、レーザー出力が安定しにくくなり、彫刻にムラが出ることがあります。

このように、どのようなレーザー出力の製品を選ぶべきかは、彫刻するものによって異なります。

レーザー彫刻機を選ぶ前に、どのような素材にどのような彫刻を行いたいのかを考えて、ディーラーに相談することをおすすめいたします。

業務用に適したレーザー発振器とは

CO2レーザーの発振器には、炭酸ガスをガラス管に封入して作られたガラス製発振器と、アルミチューブを溶接して完全にシールドした高性能のメタルシールド発振器があります。大きな違いとしては、レーザービームの発振力を維持できる時間と部品価格の差、水冷が必要か空冷で対応可能かの3点でしょう。ガラス管タイプのものは、安価なのですが耐久時間が短く、水冷が必要で手間がかかります。

言わずもがなの事ですが、中国製レーザー機のほとんどが、このガラス製発振器を搭載していますから、初期投資額は安くて済みます。

しかし、いきなり二か月もしないうちに発振管の寿命が尽きることもあり、業務用としては信頼性に欠けます。

それを見越して、最初から予備のガラス製発振管がセットになっているものもありますが、これなどはまだ良いほうです。

販売店に、いちいち消耗品としてガラス製発振管をオーダーして、自分で新しいものに取り換えながら運用することになります。交換時には、自分で光軸調整を行う手間もかかります。

片や空冷のメタルシールド発振管は、レーザー出力の変化を感じることなく、数年もの長期間運用することができます。

これでは、まるで金魚すくいのポイと金網を張った手網の違いのようなものです。破れたら次々新しいのに替えるか、安定した道具を長く愛着を持って使うかの違いは、どちらが業務用として適しているか考えるまでもないことでしょう。

いくら安いからと言っても、ガラス製発振管の交換には手間も暇もかかるうえ、最後には作業現場に大量のガラス管を廃棄物として積み上げることになります。

メタルシールド発振器

メタルシールド発振器なら、ガラス発振管よりはるかに長く使用できるうえ、結果的にトータルコストも安くつきます。

さらにガラス製発振器の場合は、使用時間が経過するにつれてレーザー出力が目に見えて減衰していくという特徴があり、だんだん弱くなって最後には浅い彫刻も出来なくなって交換を余儀なくされるという、レーザー出力の調整が難しいという一面があります。

「レーザー発振管の予備を持てば良い」と考える人もいますが、頻繁に発振器を取り替えることが業務に支障をきたすことは自明の理です。

発振管の種類別コスト比較
初期費用発振管価格と交換頻度パワー出力
ガラス管発振管タイプ安い2~5万円の発振管を1~2か月で交換発振管交換時の落差が大きい
メタルシールド発振管タイプ高い35万円(30W)の発振管を5~7年で交換緩やかに低下

レーザー彫刻機の選ぶときのポイント

レーザー彫刻機を選ぶ場合、加工サンプルを見ただけではそれほど大きな違いが無いような機械も有るにはあります。

しかし、実際の加工では動作速度がかなり遅かったり、動作時にガタガタと異音がしているものも見受けられます。

ですから、レーザー彫刻機選びで検証するには、テスト加工している様子を展示会などで実際に見ることも大切です。このとき操作盤の表示クオリティや操作性、実用性を確認することも忘れず行いましょう。

このように、レーザー彫刻機を選ぶときは、利便性、加工機本体の安定性、販社のサービス体制、システム自体の実績と将来性も見据えることも大切です。

「そんなことはわかっていても、高い機械では手が出しにくいだろう」と思われる方がおられるかもしれません。

しかし、業務用としてレーザー彫刻機を長く安定して使いたいなら、前掲の「正しいNCルーター加工機の選び方」でも書きましたが、ガラス製発振器の安い機械とメタルシールド発振器の本格的な機械を比較することはナンセンスだということが、お判りいただけたことでしょう。出来上がる製品のクオリティや加工時間、ランニングコストを比較して、費用対効果を確認すれば、おのずと選ぶべきレーザー彫刻機は見えてきます。

以上、業務用レーザー彫刻機の選び方について述べてきました。当社では、レーザー彫刻機のパイオニア、EPILOG社のレーザー彫刻機を扱っております。EPILOG社のレーザー彫刻機は、レーザー出力の安定性や耐久性の高いメタルシールド発振器が用いられています。歴史が古く、信頼性の高い製品です。業務用レーザー彫刻機の導入をお考えの方は、お気軽にご連絡ください。

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