正しいNCルーター加工機の選び方

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近年、NCルーター加工機は自作キットや隣国などで製造される廉価機器が出回るようになりました。私の知る限りでも、そのような機械を買われて、加工精度が出ずに製品化に失敗したり、すぐに壊れて使えなくなる例が少なからずあります。

このコラムでは、プロ用として使用するNCルーター加工機選びで失敗しないための考え方をまとめました。

NCルーター加工機とは

コンピュータで加工動作を制御できる加工機のうち、主にXYZの三軸でスピンドルを動かす加工機がNCルーター加工機になります。

NCとはNumeric Controlを省力した頭文字で、日本語にすると数値制御です。

当社で扱っているNCルーター加工機は、こちらのページをご覧ください。

NCルーター加工機の動作制御

この数値制御するためのソフトウェアがおもにCAD/CAMで、主にというには「自動プロ」というソフトウェアもかつては有ったからですが、CAD/CAMとは「コンピュータでデザインして/コンピュータで製造する」という英語の省略形です。

実はCADに基づいてCAMが働く構造なのにCAMのほうが先に存在していたといわれるのは、この自動プロの方が先に数値制御に利用されていたからにほかなりません。自動プロもCAMの一つということになるんですね。

CAD/CAMやNC制御機器の歴史

長い歴史があるように思われるCAD/CAMやNC制御機器ですが、本格的に製造業に活用されるようになったのはまだ40年ほど前のことです。

それまでフライス盤や旋盤、ルーターや彫刻機も人がハンドルやゲージを使って動かすものばかりでした。パソコンで加工する物の形状を設計して それがモーターの動きだけで工作機械が自動的にものを作ってくれるなんて夢のように思える時代もありました。

当社が最初に手掛けたCADベースの自動彫刻機も、国産では二例目の機種で、ソフトウェアもNECのPC-98シリーズ専用の二次元CADでした。

初期のNC制御機などは、データを転送するのに紙テープを読み込ませていましたから、パソコンからフロッピーディスクでデータを渡せるだけでも画期的で、「ケーブルで直結して数値制御なんてすばらしい」と思える時代もありました。

その後にMS-DOSが出てきて、そこで動作するCAD/CAMが出てきました。その時代のCAD/CAMは、金属を加工する機能としては今でも十分に通用するため、いまだにその時代のCAD/CAMを利用している人も多く、新しい需要が減ったためかCAD/CAMの開発は止まっています。

日本国内では、当社が開発・販売しているCAD/CAM極楽彫Premium10などを除けば、64bitパソコンに対応したCAD/CAMを探すことは困難になりました。

NC加工機のモーター

この当時のNC加工機の駆動系に使われていたのがステッピングモータです。

NC加工機に円弧を描かせようとしても、台形駆動(速度制御運転パターン)と呼ばれる動作指令のため、ぎこちない動きにしかならなくて、早く動作させようとすると直線の時だけやたらと早く、円弧補間は五分の一くらいに速度が落ちていました。

また、出力の弱いステッピングモータを使うと、負荷のかかる加工では「脱調」をきたして位置決めを失い加工が成立しなくなることもありました。かといってステッピングモータとアンプのパワーばかりを上げても、まるで頭の働かない筋肉ムキムキマンのように手加減のできない、大げさでうるさい機械になってしまうだけでした。

こういったステッピングモータの弱点を克服し、高速でハイパワーな位置決め制御ができるものとして登場したのがサーボモータです。サーボモータは、国内ではFANUCやMELDASのコントローラを使って、このモーターで工作機械を制御するのが主流となってゆきます。

余談ですが、初期の段階には電気メーカー各社がこぞってNCコントローラを手掛けており、東芝のTOSNUC、NECのNEDUC、沖電気のOKIPAS、安川電機のYASNUCなどがありました。

モーター駆動の機械の種類

またモーターの駆動で機械を動かすのは工作機械だけではなく、ペンを走らせるプロッタや、剃刀のような細刃で粘着シートを切るカッティングプロッタも登場します。これらのメーカーは大掛かりなNCコントローラは搭載せず、自社の制御回路でモーターを駆動させる技術を次々に確立させてゆきます。

こういった発展を繰り返す中で、モーター駆動の機械は、次の三系統に大別することができるでしょう。

  1. NCルーター加工機も同じようにNC制御装置を搭載してサーボモータを駆動する大掛かりなもの
  2. プロッタなどの自社制御技術をもとに作られるコンパクトでリーズナブルなもの
  3. いまだにステッピングモータで粗い動きしかできないもの

NCルーター加工機の種類と選び方

ここまで、NCルーター加工機を動作させるCAD/CAMのことやNC制御機のこと、モーターのことをご説明いたしました。漠然と、NCルーター加工機の正しい選び方が見えてきたかと思います。

それでは、NCルーター加工機の種類と選び方に入ります。NCルーター加工機をホビーレベルではなく、仕事として活用する場合を想定して、正しい選び方をご説明いたします。

自作キットのNCルーター加工機

一番手が出しやすいNCルーター加工機は、ヤフオクなどでもよく出展されている自作キットの卓上機です。これは、機械の価格は手頃でも、自分で組み立てなければならず、最終的に動けば満足というホビーレベルのものです。同じ廉価版で、最初から組み立てられたNCルーター加工機でも、完成品の仕上がりレベルは変わりません。プロの加工現場に持ち込めるものでないことは言うまでもありません。

ステッピングモータのNCルーター加工機

次に手が出そうになるのが、有明などの展示会場でよく見かける、隣国あたりで作られたNCルーター加工機です。

一見しっかりした作りに見えますが、そのほとんどがステッピングモータで駆動しています。スピンドルも精度が荒く、発熱のため長時間は回すことができません。

その装置を展示会で見かけたときに、販売員に「すぐ壊れるという評判ですね?」と意地悪な質問をすると、その販売員は開き直った表情で「でもすぐ直るんです」と答えてくれました。広い展示会ブースを借りて、派手に展示していますが、実加工を常時実演していることはまれですから、あまり加工の動きや仕上がりを見てほしくないのかもわかりません。

著作権や工業所有権に甘い隣国当たりの格安NCルーター加工機で一番問題なのは、イギリスやフランスの高価なCAD/CAMのコピー版を、格安もしくは無償で機械にバンドルしていることです。

ソフトの版権を所有する人にコピー版で製品を加工している現場を見つかったらどんな賠償請求をされる事でしょう?欧米系の人たちの怒りを買うと桁違いの裁判になる場合がある事も十分注意する必要があります。

プロッタメーカー系の卓上型NCルーター加工機

次に手頃な機械はプロッタメーカー系が作った卓上型NCルーター加工機です。

国産、アメリカ製、フランス製のものが中心ですが、メーカーによっては3Dプロッタと名付けたり、ラピッドプロトタイピングマシンと位置付けたりしています。

この卓上NCルーター加工機で、価格がおおむね150万円以上のものは、サーボモータで駆動しています。逆にそれ以下のものはステッピングモータをチューニングして、昔よりは静かで滑らかな動きができるように作りこんであります。しかし、ステッピングモータなので、負荷のかかる仕事はしょせん無理です。

ここでいう「負荷のかかる仕事」とは、真鍮やステンレス、チタンなど硬い金属の彫刻や切り抜きのことです。やりたい仕事が、こういった負荷のかかる金属系の加工でしたら、必ずテスト加工を繰り返して満足できてから導入しましょう。有名なメーカーの製品でも、営業担当者は売りたい加工機を売り込んでくるため、加工素材の範囲が限られるものでも勧めてきます。ですから実加工でサンプルを徹底比較することこそが、時間はかかっても理想的なNCルーター加工機を選ぶ近道です。

逆にテスト加工をせずに、ブランドイメージばかり強調するメーカーのNCルーター加工機は、要注意といえましょう。

大型NCルーター加工機

大型NCルーター加工機は、日本の木工機械メーカーのものから、イタリアやデンマークのおしゃれな外観のもの、隣国製のまだ あか抜けない外観のものもあります。しかしここでもステッピングモータのものは論外ですので、NCルーター加工機を選ぶ際には十分ご注意ください。

あえて申し上げるなら、おいそれと返送などのできない大型機こそ、優秀なエンジニアを抱えたアフターサービス体制のしっかりした国産メーカーのものを選ぶことが肝要です。

正しいNCルーター加工機の選び方まとめ

結局のところ、NCルーター加工機のマシンだけを販売しているところは、メーカー主導で大型機を扱っている業者を除いて、今は少なくなり、CAD/CAMとNCルーター加工機を合わせてトータルシステムとして販売されることが多いような傾向が見えます。

そのため、正しいNCルーター加工機選びとしては、ソフトウェアとNCルーター加工機本体が加工目的と合わせてバランスが取れているかどうかを確認することが重要です。

さらにソフトウェアの鮮度と拡張性、利便性も見落とせません。

加工機本体に関しては安定性、サービス体制、導入実績と将来性を見据えることが大切です。

「そんなことはわかるけど、自作キットや隣国製などに比べて、国産品は値段が高過ぎるだろう」と思われる方がおられるかもしれません。

しかし、プロ用の生産財として長く安定して使いたいなら、自作キットや隣国製の機械と比較することはナンセンスです。加工品の仕上がり状態をよく見て費用対効果で比較しなければ、自作キットや隣国性の機械ではダメ元で購入する事まで含めて、必ず無駄な出費につながります。

値段だけで選んだりしていた官庁の入札などでも、今は粗悪品が参入できないように基準項目を増やす傾向があるくらいですから、プロ用としてNCルーター加工機を選ぶときは、値段だけで決断しないことを心がけましょう。

いいものは安くは買えないが、長く使ってみれば結局はいいものの方が安くなることは、マーケットの哲理です。

古くからのことわざに「安物買いの銭失い」というものがありますが生産設備を検討するときにこそ、先人からの教えとして留めておく必要があるのではないでしょうか

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