彫刻用CAD/CAM極楽彫Premium10を用いた封蝋印の製作方法

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ロカ岬に行ったとき記念に発行してもらった証明書

この写真は、私がポルトガルを観光旅行して、ユーラシア大陸の最西端とされているロカ岬に行ったとき記念に発行してもらった証明書です。よく見ると日付が2016年2月10日となっていますから、今から4年前ですが、証明書の左下にはリボンが赤い蝋で封緘されています。

この証明書の発行手数料は5ユーロかそこらで、当時の為替レートで700円くらいです。ポルトガルでは、5ユーロはレストランでハウスワインを1本頼むのと同じくらいの値段ですが、まったく高いとも思わないで、夫婦の二枚分を頼みました。

ところで、考えてみたらこんな紙切れ一枚になぜ5ユーロもの値段が付くのでしょう?

おそらくリボンと封蝋(ふうろう)が無ければ、2ユーロでも高いと感じるかもわかりません。

封蝋には、紙切れに威厳と価値と有難みを付加する、ものすごい力があるようです。

日本の観光地でも、外国人向けの観光記念に、この封蝋付き証明書を発行したらどうでしょう。

その証明書には、厚めの和紙や組紐なんかの和風素材を使って高級感も付加したらよいでしょう。

さあ、このコラムでは、既製品のイニシャル文字の封蝋印から、紋章入りや凝ったオーダーデザインの高価格帯の封蝋印まで、いろいろ作ってみましょう。

封蝋印データ作成にも最適な極楽彫Premium10の機能

封蝋印のデータの作成に使用するソフトは当社一押しの彫刻用CAD/CAMソフト極楽彫Premium10です。

極楽彫Premium10は、TrueType書体やOpenType書体を自由にレイアウトできますから、リストの中から選んで使うなり、背景に装飾性を加えるなら唐草やコーナー飾などの素材集から選んで組み合わせてもいいでしょう。

英語のイニシャルをひと文字だけのデータを作る場合、これが一番簡単な作業ですが材料の真ん中に文字がセットさえされていれば何も問題はないでしょう。

極楽彫Premium10では、対象の文字や図形をマウスで選択してF9キーを押すだけで素材の中心に自動センタリングしてくれます。

EPSなどのベクトルデータも読み込めます。ただし、グラデーションやカラー情報を埋め込んであるデータや複雑な編集をしてあるものはヘッダーが大きくなり、読み込みに時間がかかるうえ 余計な装飾を削除する作業が必要になりますから、なるべく彫刻に必要な輪郭のデータだけでEPS保存したものを使ってください。

読み込んだベクトルデータを編集して、さらに文字を加えることもできます。

カラー画像のビットマップは、読み込んでベクトル抽出することもできます。輪郭を区別できるように、色数を削減したり、解像度を簡単な手順で落としたりすることもできます。

こうして得られたベクトルデータは、外部から読み込んだEPSのベクトルデータやレイアウトした文字フォントのアウトラインとまったく同列に扱えます。

ベクトルデータをレイヤー分けして保存することもできますが、そのまま同一レイヤーに一括保存もできます。外部に必要ならEPS形式でエクスポートすることもできます。

印面を材料の表面にするか底面にするか?

刻印や印章を彫刻する場合は、印面を材料の表面に形成します。材料表面の印面がきれいに仕上がっていないと、朱肉などで捺印したときに文字の細部がつぶれて、きれいな印鑑ができません。(印鑑とはハンコに朱肉を着けて紙に捺したものの事です。ハンコの正式な呼び名は印章になります。)

ところが、封蝋印を彫刻する場合は、彫刻した凹部分に溶けた蝋が充填されて、冷めて固まったものが最終製品になりますから、印面は彫刻された材料の底部である必要があります。

スタンプした封蝋の上面が、印章の印材と同じような形状になるわけです。

極楽彫Premium10では、彫刻するものに応じて、この印面を材料の上面にするか、底部にするかを選択できるチェックボックスで設定します。

極楽彫Premium10の便利な作図機能

脇道に逸れましたが、極楽彫Premium10の作図機能には、縄目一つを円弧や楕円など任意のカーブに沿って自動配列する機能もあります。

デザインを任される立場の人には、イラストレータを使っても簡単には出来ないこのような作図作業が簡単に出来るので、いろんな業界で重宝される機能ではないでしょうか。

彫刻刃を走らせるツールパスを作成

作図ができたら、次に彫刻刃が走る軌跡、すなわちツールパスをソフトに作らせます。

昔の彫刻ソフトのようにパソコンの画面上でソフトをいろいろ操作してツールパスを作るのではなく、ソフトが勝手になんの修正も確認もいらずに、「完成形のツールパス」を作ってくれる便利さをまずご確認ください。

通常の封蝋印を彫刻する場合は、ホットスタンプのように複数の刃物を使用することはありません。なぜなら印面のサイズが小さいので一本の刃物で全部彫れてしまうからです。

ちなみにこの薔薇と絵柄の直径20mmの印面は、40個もの縄目があるのにもかかわらず、3分足らずで彫刻出来ます。

繰り返すようですが、極楽彫Premium10は彫刻用CAD/CAMソフトですから、彫刻したい図柄か出来れば、あとは彫刻メニューからアイコンを選んで条件を確認するだけで完成形の彫刻ツールパスを作ることができます。その演算は、ほんの数秒です。

ツールパスが出来れば、その加工結果を事前に3Dビューで見られるシミュレーションで、思い通りの封蝋印が出来るか確認しましょう。

出来上がったツールパスはいったん名前を付けて保存します。同じ封蝋印を何度も製作したい場合には、保存しておいたデータを繰り返し使用出来ます。

保存したツールパスは、スプーラーと呼ばれる送信ソフトでNC金属彫刻機に送ります。

気を付けたいことは、送信機能がCAD/CAM本体の中ではなく、そこから切り離してタスクバーの中にアイコンが仕込まれていることです。これはデータ送信に時間がかかる昔のNC金属彫刻機にも対応できるように配慮された基本構想の名残ですが、パソコンの負荷も少なくする目的もあります。

NC金属彫刻機にデータを送信中にも、新しいデータ作成に取り掛かれる、本来理想的なシステムの構成といえます。

金属彫刻機ME-330Ⅱ50kで封蝋印を製作

金属彫刻機ME-330Ⅱ50kを用いて封蝋印を彫っている写真です。データを送信したら彫刻機は自動的に動き始めます。

彫刻が完了したら、歯ブラシで細かい切り粉をかき出します。

さっそく、出来上がった封蝋印を用いて、溶かした蝋に押し付けて仕上がりを見ましょう。

綺麗に転写しています。

他にもいろいろと封蝋印を彫ってみました。

使う刃物や彫刻する素材が同じなので簡単です。

極楽彫Premium10であれば、文字の組み合わせだけのデザインであれば、簡単に作れるので、さまざまな種類の封蝋印をどんどん作れます。

家紋などのロゴを封蝋印にすると雰囲気が出ます。

徳川家の葵の御紋で封蝋印を製作しました。インバウンド商品にもご利用いただけるかと思います。

神社の封蝋印(サンプル)を製作しました。参拝記念にいかがでしょうか?

封蝋を手紙や書類に捺すのは西欧の古くからある習慣で、格式と威厳を高めながら日本のハンコと同じく「本物である」と証明する機能も持っていたと思います。

しかし、外国人観光客がヨーロッパのエンブレムや伝統的なデザインの封蝋を日本で見つけても喜ぶでしょうか?

我々が海外旅行に行って日本刀の鍔や鎧のデザインを見かけたときと同じような「???」の感覚を覚えるのではないでしょうか?

ですから、葵の御紋の封蝋印や神社の封蝋印はそういう意味も込めて、日本の文化や伝統を西欧の習慣である封蝋にするというわかりやすいコンセプトで、あえて30mmの特大判にしてみました。

はたして、こうしたものにニーズがあるかどうかわかりません。

しかし「ニーズは作るもの」「人気は生み出すもの」という考えを持って、成功する打率は一割台くらいと割り切れば心配することは何もありません。

せっかく持っている設備やソフトウェアを生かすために、どんどんモノづくりにトライしてみましょう。

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