NCルーターとは、エンドミルで素材を切削するコンピュータ制御された工作機械です。CNCルーターとも言われています。プログラムに沿って素材を切削します。
プリント基板の製造工程としては、主に基板用銅張積層板と呼ばれる専用の材料にレジスト印刷(マスキング)をしてエッチング(薬液と電流により銅膜を部分的に融解除去)、流水による洗浄、ソルダーレジスト(ハンダの熱にも耐える表面保護塗装)、マイクロドリルによる穴あけ、外形切り抜き等の順に行うという方法が、今のところ最も早くて正確に、しかも大量に安価な製品を得ることができるようです。
しかし、試作や少量製作の場合でもレジストとエッチング、洗浄などの工程に大掛かりな設備が必要となるので、それらを全く必要とせずにNCルーターだけで銅層の剥離切削、穴あけ、外形切り抜きまで終わらせてしまうという事例も見受けられます。
もともとレジストとエッチングで回路を作る量産方式で加工しても、後工程でマイクロドリルによる穴あけと外形の切り抜きにはNCルーターが必要とされているわけですから、全工程をNCルーターで手軽に終えてしまえるとはいっても、新たに無駄な設備を追加しているわけではありません。
さらに、NCルーターにVカットのビットを付ければ薄皮残しのV溝切りも手軽に行うことができますからこれを見逃す手は有りません。
NCルーターを使った基板加工の工程
ではさっそくNCルーターを使った基板加工の工程をご覧いただきましょう。
今回も加工データ作成とNC制御には、彫刻用CAD/CAMの定番ソフト「極楽彫premium10」を使用します。
1.取り込んだDXFデータのチェックと編集
2.ベクトルデータを作成
回路図がCADでなくBMPなどの画像データの場合でも「輪郭抽出機能」で切削領域の指定に必要なベクトルデータを作成できます。
3.数種類の工具を組み合わせた領域切削
数種類の工具を組み合わせて領域切削することで時間短縮がはかれます。
ここでは銅メッキ層や基材のガラスエポキシの加工で、使用する刃物によっては消耗が早くて困っておられるユーザーも居られますが、これらの解決法については、別のコラム「長持ち刃物の秘密」で取り上げさせていただきます。
CAD/CAMの操作やツールパスの出力手順はいたって簡単ですが、さらに詳しい機能については実際の加工デモをご覧になることがいちばんよくわかるかと思われます。
NCルーターによるプリント基板製造のメリット
半導体の回路線幅がナノメートルのひと桁台になりそうな時代を迎えても、それを実装するプリント基板は工業製品の開発と生産に欠かせない重要な電子パーツであることに変わりがありません。
しかも試作とテストの繰り返しで設計変更や一部修正が絡むパーツですから、あまり時間を費やす工程が混在していては製品全体の開発に遅れが生じる怖れもあります。
彫刻刃で素材を切削するという加工は、素材と対応工具の出現に伴い進化してきた、「古くて新しい方法」です。極楽彫と小型卓上NCルーターを活用して、あまりコストをかけないでスピーディーなプリント基板開発にどうかお役立てください。