包丁やナイフの製作には、木材や合成樹脂でグリップにあたる部分の合わせ柄を作るという仕事と、金属部分である刀身に作者銘を入れたり龍などの図柄を彫刻するという、全く異なる二つの工程があります。
どちらも専門的な加工でそれなりにスキルを身に着ける必要がありますが、これを一台の彫刻機で兼用出来たら、まさに一石二鳥の設備になるとは言えないでしょうか?
今回はME530Rと極楽彫premium10を使ってこの二つの工程にそれぞれ適した刃物を交換しながら順を追ってご説明してゆきます。
まずは柄の作成は成形ルータービットという刃を使った二次元加工で行います。
成形ルータービットとは加工断面と同じ形の刃を成形して、望む断面形状の切り抜きを一発で得るビットの事です。

工具の登録
極楽彫premium10やArtEsperには様々なパターンの工具で手持ちのモノをあらかじめ必要なだけ登録しておく機能が有りますが、このパターンに収まらない形状の工具もカスタム形状工具として登録することが出来ます。


二次元CADの画面上に登録したい成形バイトの半身の断面図を描いて、カスタム工具登録のアイコンをクリックして各加工条件を入力して工具の名前を付ければそれで完了です。ほかの登録工具と同じように呼び出して利用することが可能になります。
ここでは手持ちの首下の長い逆Rカッター(ラウンドオーバー)を登録してみました。
グリップ製作の工程

包丁やナイフの柄は板状の材料から左右対称のパーツを切り抜くことで製作します。
切り抜いた直後に飛ばないように固定に工夫がありますがここでは最後に空ける穴を先に空けてそれを使ってねじ止め固定することで無駄な工程を省きます。
ここでは固定用に下板に一度だけタップを切ったりすることが必要になりますが、ある程度の量産を行う場合は大変効率の良い方法になります。
皿ネジ穴加工

最初に材料を両面テープかクランプで固定して皿ネジ穴を明けます。
切り抜き加工

その穴を利用して材料をねじ止め固定し、成形バイトに刃物を持ち換えて切り抜き加工をします。
切り落とし

根元の部分だけ別の刃物で切り落として、固定に使ったねじを外せば完成品が取り出せます。
後で穴を明けたりするより正確な位置に穴が空けられるメリットがあります。

刀身の銘の彫刻
次に刀身の銘の彫刻です。

彫りたい銘の2D画像を用意します。あまりクリーンな画像より少し有れた画像の方が手彫り調の仕上がりに近づけることが出来ます。

ビットマップ画像から輪郭抽出する事がまず必要になります。

2Dツールパスから彫刻加工を選んで輪郭抽出した全データを選択ベクトルとして指定してツールパス生成をクリックします。
ここでは刀身銘彫刻用に45度0.2mmの三角刃を使用しましたが、角度、先端径ともこの刃物の使用にこだわる必要はありません。
刀身の素材、銘の大きさ、深さに応じて選択肢は少ないながら選びようはあります。

次に龍の模様を刀身の広範囲にわたって彫り込みます。