レーザー彫刻機は、グレースケール画像の濃淡を発振パワーの強弱に細かく連続変換しながら彫刻できる事を、コラム「3Dレリーフ・ペット位牌の作り方」でもご説明しています。
実は、この彫刻方法を「Height Change」という3Dモデリングの手法をもとに転用することで、3Dモデルのレーザー彫刻が可能になるのです。
Height Changeは『画像の濃淡をモデルの高低に変換する』技術ですが、この変換を逆転すれば、『モデルの高低を画像の濃淡に変換する』ことが可能になります。
当社で開発販売しているルーター彫刻機とレーザー彫刻機の両方に対応するCAD/CAMソフト『極楽彫Premium10』には、このHeight Changeと、その逆のいわばGray Scale Changeの機能が両方備わっています。つまり、極楽彫Premium10を用いることで、レーザー彫刻機で3D彫刻が可能となります。
極楽彫Premium10の操作
極楽彫Premium10を用いて、パソコン操作の手順に沿って画像をはさみながら3D彫刻の方法をご説明いたします。
3Dモデルのインポート
この3Dデータは、もともとCAD/CAMソフト「ArtEsper」の一世代前のソフトである「ArtCAM」を使ってかつて作成したものです。極楽彫Premium10は、サイズや高低差の設定、加工する面のXYZ位置の確認をしながら、多彩なデータ形式の3Dデータを新しいアートワーク上に呼び出してセットすることができます。
2Dグレースケールを生成
レーザー彫刻機で3D彫刻するためには、2Dグレースケールを生成する必要があります。アイコン一つをクリックするだけの簡単な操作で、2Dグレースケールが制作できることをここではご理解いただきたい思います。
レーザー彫刻機に送信
彫刻機への送信は、レーザー彫刻機の場合はプリンタドライバを、ルーター彫刻機の場合はツールパススプーラを利用します。それぞれの彫刻機をパソコンで制御するということになります。
ツールパスを自動生成(ルーター彫刻機の場合のみ)
ルーター彫刻機の場合には、モデルを切削するための三次元ツールパスをCADCAMが自動生成します。
一般的な3D彫刻用の2Dグレースケールを作る方法
「3D彫刻なんて、どこでもやっている」と思われる方たちもおられると思います。しかし、一般的な業者では、この3Dモデルの高低に連動したグレースケールのデータ制作には、PhotoshopやIllustratorなどを駆使して、膨大な手数と時間をかけて製作しておられるものが多いのです。
いわば、これは間違ったデータ処理方法といえるものなのですが、PhotoshopとIllustratorしか使わない、または知らないデザイナーがよく陥る落とし穴です。「とりあえず製作に取り掛かる」という勤勉な人たちが、いわば人海戦術にも等しい『力仕事』でやってしまっているといえば言いすぎでしょうか?
そういうわけですから、その工数に見合った製品単価でしか作品を販売できないし、単品の製作や3Dの名入れサービスも安くすることができません。
しかし、アクリルに3D彫刻したこのサンプルは、横幅が16センチほどですが、データ変換からレーザー彫刻の完了までに要した時間は10分ほどでした。
3D彫刻の幅が広がる極楽彫Premium10
3Dモデルの制作には3Dモデラーと呼ばれるライノセラスやShade3Dが国内では普及しています。これらの3Dモデラーを使えば簡単に三次元モデルは作れます。
極楽彫Premium10は、3D対応のCAD/CAMですから、それらの外部データの読み込みを標準装備しています。
ライノセラスやShade3Dと極楽彫Premium10を組み合わせることで、ルーター彫刻機による切削からレーザー彫刻機による3D彫刻まで、簡単に加工することができるのです。
しかも、3Dプリンタでは作れない本物素材である銘木の彫刻や、用途をもった特殊な樹脂材料なども、レーザーで焼けるものなら、その素材を塊から手軽に削り出して加工することができます。
さらには、ルーター彫刻機を使えば真鍮やアルミ、マグネシウム合金、機能性樹脂など、レーザーでは加工できない素材の3Dモデルの加工ができます。また、高速スピンドルが搭載されたルーター彫刻機を用いれば、データを凹凸反転して金型彫刻まで可能になります。
現時点で普及している三次元加工の技術は、3Dプリンタばかりではないことをご理解いただけたことと思います。