2000年以降、日本国内も空前のペットブームで、猫と犬だけで2000万匹が保健所に登録されているということです。
犬猫ともに平均寿命は12歳くらいといわれていますから、170万匹くらいが毎年死んでゆく計算になります。
単純な計算で現実味があるかどうかわかりませんが、このペットの位牌を作って身近に供養される飼い主はどのくらい居られることでしょう。
人の場合、日本では墓石に遺影を彫ったり、人造大理石を使用したりすることはあまりありませんが、それとは逆にペットに本物の御影石でお墓を作る例もあまり見受けられません。
ここでは、飼い主からペットの写真を持ち込まれた場合に提案できる、比較的高価格帯の人造大理石(デュポンコーリアン)を用いた3Dレリーフの「ペット位牌」を作ってみましょう。
CAD/CAMの「極楽彫Premium10」で写真をレリーフ化
素材とする写真のデータは、そこそこの解像度があればレリーフを彫刻することができます。
今回は長辺が1600ピクセルのデジカメで撮影したJPEGデータです。
彫刻用CAD/CAMソフト極楽彫Premium10で画像を読み込むときに、レリーフの実寸サイズと高低差を設定するダイアログボックスが現れます。
今回のペット位牌製作では、横幅の設定を120mmとして、レリーフの高低差を0.8mmにセットしてみました。
極楽彫Premium10では、このように簡単な設定だけで3Dのページにレリーフが出来て表示されます。
まるでそこに猫の立体写真が現れたように見えます。
ペットのレリーフ画像を楕円形に切り抜き
この設定でいきなり削り出してレリーフを作ることもできますが、「ペット位牌を商品化する」という意味では、クオリティがまだまだでしょう。そこで、レリーフを楕円で切り抜きしたいと思います。
位牌に削り出したい猫の写真部分を楕円形に切り抜きます。
これも操作はいたって簡単です。作図機能で楕円形を描きレリーフ編集機能で楕円の外側をリセットするだけです。
レリーフの凹凸感を強調
しかし、このままではペット位牌としての商品化レベルにはまだ達していません。レリーフの凹凸感を強調してさらに立体的な位牌を作ってみましょう。
作図画面幅のサイズ変更は上下左右、別々に追加できますから、加工する材料の寸法に合わせて余白を設定します。
次に、切り抜きするときに使った楕円形をクリックして、レリーフの部分だけを薄山状に盛り上げます。もちろん、この設定も簡単です。
この薄山盛り上げ機能は、表札や木札のかまぼこ文字を作るときにも、同じように断面を定義することで簡単に行えます。
位牌の名入れ
次は、位牌には必ず必要な名入れです。
レリーフ下部の余白にTrueType書体やOpenType書体の中からお手持ちの書体で文字をレイアウトします。
ツールパスを生成
あとはレリーフ部分と文字部分の彫刻に適したそれぞれのツールパスを生成してソフトの作業は完了です。このとき極楽彫では定評のあるツールパステンプレート機能を使うので加工条件をいちいち設定入力する必要もなく、無理無駄ムラの無い最適値でいつも安定した加工を行うことが出来ます。
次の写真は、レリーフ部分にツールパスを設定しているところです。
次の写真は、文字の部分を削り出すためツールパスを設定しています。どちらの設定も、操作は簡単に行えます。
加工結果を念のためにシミュレーションすることも出来ます。次の写真は、位牌の削り出しのシミュレーション結果です。
その加工時間をあらかじめ算出することもできます。
今回の位牌は、両手の手のひらを合わせたぐらいのサイズですが、このサイズの削り出しでトータル1時間58分と積算されています。
ルーター彫刻機での削り出し
ルーター彫刻機をパソコンに接続し、人造大理石(デュポンコーリアン)の板をルーター彫刻機に固定します。プリンターで印刷するような操作で、位牌の削り出しが開始されます。
写真の卓上ルーター彫刻機は、50,000rpmの高速回転で金属の彫刻も可能な「ME-300Ⅱ」です。
写真には映っていませんが結構たくさんの切削粉が出ます。このME-300は切削粉が飛び散らないように、アクリル板で覆いをしています。
あとは、シミュレーション結果にもあったように、2時間弱の時間を待つだけです。
薄墨色絵の具の塗布
彫っただけでは、レリーフの凹凸がよく見えないので、薄墨色のアクリル絵の具を刷り込みます。アクリル絵の具は歯ブラシを使って塗布しました。
最後にアルコールウェスでふき取ったら完成です。
次の写真は、アクリル絵の具が乾燥した後に、アルコールウェスでふき取った状態です。ペットの顔や髭、文字の凹凸がしっかり見えます。
ペット位牌は、ルーター彫刻機を用いた究極のオーダーグッズ商品です。
CO2レーザーでペット位牌
CO2レーザーで焼き付ける方式のメリットは、素材が天然の御影石であることと、加工時間がサイズにもよりますが10~20分と短いことです。
デメリットとしては、網掛けのモノクロ写真なので新聞に印刷した写真のような粗さが見えることと、立体感がないことがあげられます。
どちらも作って売ることが出来るなら、CO2レーザーで手早く安価に仕上げるか、ルーター加工機でじっくり時間をかけて高級品を作らせるか、客層や販路でその違いは出るものと思われます。
ただ、このようなオーダーメイドのペット位牌は、ネット上でもまだ販売されていませんので、ビジネスチャンスでもあります。
CO2レーザーをお持ちの方なら、手っ取り早く黒御影石にモノクロ写真を焼き付ける方式がお勧めです。ルーター彫刻機をお持ちの方、もしくはこれからさらに高い付加価値の商品開発にお取り組みになりたい方には、3Dレリーフ・ペット位牌はお勧めの加工製品といえるのではないでしょうか。